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Vol_18
  サバの刺身文化のあるところは九州に多い。
 豊後水道周辺はその最たるものであるが、豊後水道周辺の佐田岬と佐賀関を離れて日南海岸の佐伯や蒲江、あるいは宮崎県に入るとあまり聞かない。そして、大隅半島から南薩摩に入ると、この食文化のあることが聞こえてくるのである。薩摩半島ではサバの刺身を常食にしているという。また、串木野から天草一帯でもサバの刺身を常食している。
 このようにしてみて気づいたことは、サバの刺身を常食にしている地域は潮流の変化の激しい地先を漁場にしているところにある。その代表的な地域は豊後水道周辺であって、さらにこの地のサバは移動しないで根つきであるとさえいわれている。これは、海底から湧く温水によって水温が高く、プランクトンが豊富であって、それゆえ、別府湾内の魚類は城下カレイにしても、関アジ・関サバにしてもその独特の生態系をもっているとされている。
 天草の海域も潮流の変化が激しい。この地のサバも身割れはしない。してみると、佐賀関での聞き書きのように、潮流の変化の激しい海域で生息する生態系をもっていることによって身が締まり、特有の肉質をつくりあげているのかもしれない。
「サバの文化誌」田村勇著 / 雄山閣より
 
 魚介類は生で食べ、畜肉は生で食べないのか、疑問に思ったことはないだろうか?
 畜肉は刺身で食べることは殆ど無い。一つには、畜肉は生では硬く食べにくいからである。
 陸上動物は丈夫な皮膚を持ち、自分の足で立って移動する為に丈夫な筋肉と腱を持っている。しかし、水中で浮力に頼っている魚介類はそれほど丈夫な筋肉も腱も必要としないので、結合組織も少なく、コラーゲンも少ない。しかもこのコラーゲンは畜肉より丈夫さも弱く、畜肉より低い温度で溶け出し、ゼラチンになる。
 このように、コラーゲンが弱く少ないことから、軟らかく生でも食べられるのである。
一方、畜肉は屠殺してもすぐには食べられない。畜肉では屠殺後に硬直、解硬、熟成をえてはじめて食肉となる。硬直中の肉は硬く、保水性に乏しく美味しくない。しかし、魚介類は熟成を必要とせず、水揚げ直後から食べることが出来るので、新鮮で衛生的に問題が無ければ、生で食べることができる。

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